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「全部で740万で折半の370万だ。俺たちの方がオッズが高かったからな。でもお前、それで車の修理しないといけないだろう」

「あ〜〜。そうだった」

「まあ、パーツだけ買ってウチで暇な時に斉藤さんに手伝ってもらいながら修理すればいいよ」

「そうだな。それがいいな」

泰蔵とパトカーの赤いランプが消えていくのを見守りながら、しばらく話し込んだ。

僕は、その間レースの場に現れた康市の事を考えていた。

彼は、いったい何をしにやって来たのだろう。

いや、ただ単に見物に来ただけなのかもしれない。

それより、ビットがまだ僕の体内に寄生していたのには驚いた。

何が、緊急防衛システムだ。でも、今日のところは命拾いしたけどね。

簡単には死なせてもらえないようだ。

すべてが終わったと思ったが、まだ何も終わっていないんだな。

やがて、パトカーの赤ランプが消えたのを確認すると2人で車を停めた場所まで戻り、車に乗り込むとゆっくりと獣道のような道を走り本道に出た。

本道に出ると、泰蔵はクラクションを鳴らして、物凄い勢いで僕の車を追い抜いていった。

さすがに、僕にはそんな気力がなく。パワーウィンドを下ろすと、月夜に揺れる、夏の風を感じながら自宅へ向かった。

道半ば、交差点の赤信号で車を停車させると不意に子供の頃の事を思い出した。

僕が子供の頃は、21世紀になれば、車は空を飛ぶし、世界中から戦争や貧困が無くなり幸せな生活が送れるとみんな信じていた。

僕が生きている2010年現在では、何一つ実現出来ていない。

それどころか、世界経済がガタガタになり、異常気象傾向がみられ。小氷河期に入ろうとしている。

そりゃあ、みんな憂鬱になるわな。

そして、自宅へ戻るとまたいつものようにベットに横たわった。

枕もとの時計を見ると、夜中の2時を回っている。

シャワーを浴びたいが、もう心身疲労で動く気すらしない。

いつものように、ふと目を閉じるといつのまにか眠りについてしまった。


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