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「栗原、早く車に乗れ。そして、俺について来い」
彼に、言われるがまま、車に乗り込むと、エンジンを掛けた。
だが、観衆の車が多いため中々駐車場から出られない。
暗闇の向こうから、赤いランプの群れが、こちらに向かって近づいてくる。
赤ランプが近づくにつれ、サイレンの音もますます大きくなってきた。
僕の前にいる、泰蔵の車は少しずつしか動かない。
ヤバイな。執行猶予中なのに…。これで、捕まったら、かなりヤバイ事になる。
その時、ダッシュボードの中に入れていた携帯電話が鳴った。
こんな時に全く誰だよ。
前を見ると、泰蔵の車のブレーキランプが点滅している。
泰蔵なのか?
慌てて、ダッシュボードを開け携帯を手に取ると電話に出た。
「おせーよ、バカ。俺だよ」
「ああ、やっぱり泰蔵か」
「オ〜。で、今駐車場の左の方からパトカーが来てるから。出たら右な」
「分かった。でも、大丈夫なの?」
「それは、分からない。でも、いざという時はブッチぎるしかないだろう。じゃあな…」
彼は、そう言うと電話を切った。
しばらく待ったが、車は前へ進まない。
僕と泰蔵の車が、やっと駐車場の出口付近に近づいた頃、パトカーの先頭が出口を封鎖しようとした。
泰蔵は、そこを切り裂くように走り抜けた。
彼について僕も走り抜ける。
パトカーのフロントバンパーをかすめながら右折し、本道に出るとアクセルを思いっきり踏み込んだ。
振り返ると、後ろにはパトカーの群れが迫っている。
本当に逃げられるのか?
僕は、ひたすら泰蔵について走った。
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