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「トランクの中に、もしもの時に備えて100万程度なら入ってるけど」

「そうか…。じゃあ、その50万貸してくれないか?レースをやるからには自分の車券を買っとかなきゃな。オレッチは、奴らの掛け金の50万を出さなきゃいけないんで手持ちがないんだ」

「分かった。僕もついでに賭けてみるかな…」

僕は、自分の車のトランクの下敷きのシートの奥に隠し持っていた100万円の札束を手に取ると、車券を売っているワンボックスの方へ向かった。

ワンボックスの前には人だかりが出来ており、オッズ表が掲げられている。

僕と泰蔵のチーム名は、いつのまにか「チーム関口」になっており、その表の前で胡散臭い兄ちゃんが威勢良く車券を売りさばいていた。

「お〜っと、栗原賢一のお出ましだ。で、どうする。買う、買わないの?」

100万円の札束を彼に手渡すと、チーム関口に50万で2口オーダーした。

彼は、僕に2枚の連絡先と金額を書いた紙切れを手渡すと、また他の客相手に商売を始めた。

再び、泰蔵の元へ戻り、車券を手渡そうとしたが手を振り払われた。

「いや、これはお前が持っとけ。それより、作戦を立てよう」

「で、どうするの?」

「奴らの車を見てみろ」

「2台とも、ちょっと小さいな。あれはホンダのシビック?」

「ああ、2台ともシビックだ。チームロゴも入って、ドレスアップして中々いいセンスだ。奴らは、あのヘアピンカーブを早く抜けるために小回りのきく小さな車をチョイスしたようだ。ここは、俺が先に走って必ず奴らより先に戻って来るから…」

「え。でも、勝てるの?」

「とりあえず、話は最後まで聞きな。俺がゴールしたらお前が出て行く。その時、例のごとく後ろから煽られるから、完全にブロックしろ。そして、ヘアピンを抜けて最後のストレートに差し掛かったらアクセル全開でゴールまで走り抜けろ。そうすれば、絶対勝てる」

「分かった。と、いっても自信が無いな。でも、出来るだけ頑張ってみるよ…」

それから、泰蔵と雑談をしているといつのまにか9時になっていた。


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