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テラスに出てタバコに火を点けた。

何もかも、すべてを失ったな。

両親も親友も財産も何もかもを……。

どうすればいい…。

その時、ふと思いついた。

やるなら、今だ。

このまま、ここで理香に付き合っているとすぐにホームレスまで転落するだろう。

それならば、いっそこのまま単身帰郷して再起を計った方がいいんじゃないか?

サイワイ、理香も今日は仕事で出払っている。

タバコを消すとリビングに戻り、便箋を取り出すと理香に家の中の物を処分し部屋をでるように書いた。

そして、寝室の金庫の中の現金をすべて取り出しその上に置いた。

マンションの売却は、沢木弁護士に依頼しよう。

ボストンバックに、貴重品と着替えを詰め込み部屋を出る。

部屋の鍵を閉めた瞬間に、カチンという音がした。

この音が、新しい人生の始まりと終わりを感じさせた。

エレベーターで駐車場まで降りると自分の車に向かい、トランクを開けると荷物を入れた。

そして、運転席に乗り込むとエンジンをかけた。

しばらく、ハンドルを握り締め目を閉じたまま考えた。

自分は、本当に正しいのか?理香に会わなくても?

分からない。それは分からない。

だが、今は前に進むことだけを考えよう。

アクセルを踏み、ゆっくりと駐車場を出た。

公道に出ると高速道路を目指した。

そして、高速道路にのると、美森に向かって走り出した。


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