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40席程度の傍聴席は裁判が始まる時間になると全て埋まった。

午前10時になると、正面に座った鈴木裁判官が話し始めた。

「それでは、裁判を始めます。被告人は椅子から起立して証言台の前に立って下さい」

「はい」

言われたとおり、証言台の前に立ち裁判官の顔を見る。

彼は、僕の顔を見ながら問いかけた。

「名前は?」

「栗原賢一です」

それから、生年月日や住所・本籍などを尋ねられたので淡々と答えた。

「仕事は?」

「無職です…」

これが人定質問っていうやつか。

僕への問いかけが終わると裁判官は検察官の方を見て話した。

「では、検察官は起訴状を読み上げて下さい」

「では、読み上げます」

検察官が読み上げた起訴状の中身は検討もつかない物だった。いや、ある程度は予想していたが掴み所のない代物だ。

簡単に言うと、偶発的に災難に見舞われ、結果的に犯罪を犯してしまったという感じだろうか。

ここで、裁判官から黙秘権の説明を受け、淡々と答えた。

それが終わると、罪状認否が始まった。

「それでは尋ねます。この起訴状には記載されています事は違っていますか?」

「いえ」

「違っていないという事ですね」

「はい」


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