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しばらく話し込んだ後、二人で理香がスーパーで買ってきた食材を、冷蔵庫に入れた。

僕と理香は、すっかり打ちとげ合い。ダイニングに戻ると再び会話を始めた。

「ケンちゃん、拘置所ってどんな所だった?」

「まあ、あれだな。拘置所自体は、飯つき風呂つきで案外住み心地はいいんだけど。取調べがメチャメチャ厳しかった」

「へぇ〜〜。そうなんだ。あ、それはそうと。面会に行けなくてゴメンね。弁護士の先生に連絡を取ったんだけど、親族以外は無理だって言われたんで…」

「そうか。でも、来なくて良かったよ。いや、変な意味じゃなくて、本当に取調べが厳しくて、何度も自暴自棄になったからね。ほら、辛いとこを人に見られるのってイヤじゃない」

「……。う〜ん。なんか、分かるようで分からない」

「そう言えば、僕のお仲間達はどうしてる?」

「富国電気の社員は、みんな早見京介に四六時中、監視されてる。それで、少しでも逆らおうものなら、解雇されちゃうんだよね」

「そうか…。それで、佐藤や康市も連絡してこないのか…」

おそらく、メールや電話も監視対象になっているんだろう。

「理香、お前はここに来て大丈夫なのか?」

「う〜ん。多分、ダメだと思うけど…」

「……」

「実は私、今の仕事を辞めて美森に戻って一からやり直そうと思ってるんだ。東京は思ってた以上に住み心地は悪いし、最近は治安も乱れて凶悪犯罪も増えてるみたいだしね」

「そうか…」

「ところで、ケンちゃんはこれからどうするの?」

「……。僕も裁判が終わったら美森に戻るかな。もう、この町で暮らす意味も無いし…」

「じゃあ、決まりだね。また、美森に戻って一からやり直そう」

「はい、お姫様。地獄の底まで、あなたをお守り致します」

僕は、笑みを浮かべ彼女と会話していたが、心の奥底では美森へ戻りたくはなかった。

いや、けして理香が嫌いだとか生まれ故郷の美森市が嫌いだとか、そういう理由ではなく。一度手に入れた社会的地位を手放したくはなかった。ただ、それだけの理由だ。

僕と理香はそれから少し話し込んだ後、寝室へ向かいベットの上で互いに抱きしめあって眠った。

そう、まるで二人の心にできた大きな傷口を癒すように。


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