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そうか、はめられたんだ。こいつらは、三友銀行から事前に株を買い受ける前に、僕に株を吐き出させたんだ。そして上原は、三友銀行からうちの会社の株を引き受けた後に、一端市場に大量の売り注文を出して、株価を意図的に下げた。そして、安く大量の株を買い戻した。
ひょっとすると暴落を見越して、プットオプションも仕掛けていたかもしれない。プットオプションを使えば、市場価格に関係なく、株を買えるから、株価が下がればぼろもうけになる。
そうして経営権を乗っ取れる状態になったら、今度は、隠し録りしていた僕との会話を、マスコミや検察にリークした。やられた。完全にはめられた。
「上記の理由により、金融商品取引法違反であなたの身柄を拘束します。宜しいですね。」
検察官の説明に同意する間もなく、手錠をかけられた。
「9時42分、逮捕。連行しろ」
複数の警察官が簡単に敬礼した後、僕の両脇を抱えたまま、引っ張った。
「引っ張るんじゃねえよ。歩くからよ」
「容疑に公務執行妨害が加わりますよ。また逮捕令状を破ると、公文書毀棄も容疑として加わります。大人しくしなさい」
「わかったよ。歩きゃいいんだろ。歩けば」
検察官に連れられ会議室を出ようとした瞬間、後ろの方で叔父さんの叫び声がした。
「この、穀潰しが〜。兄貴と俺がビンボッタレから汗水たらして築いたこの会社を、ぶっ壊しやがって。もう、お前はあの世で、オヤジに顔も見せられんぞ。バカ息子〜」
ふっ。始めから、それがあんたの本音だろう。今さら吠えんなよ。
エレベーターを降り、正面玄関の前まで来ると、ドアの向こうに多くの報道陣が押し寄せていた。朝から世間のさらし者になるとはね。夕刊の記事は、さぞ面白おかしく書きたてられるんだろうな。
誰かが見つめているような気がして目を横にやると、理香の顔が飛び込んできた。
今にも泣き出しそうだ。
その瞬間、彼女が大声で叫んだ。
「ケンちゃん〜。ず〜っと、待ってるからね〜」
僕も最大の笑顔で、彼女に向かって叫んだ。
「I LOVE YOU」
「ケンちゃーん、ケンちゃんの無実を証明してやるから待っててね」
「賢一さん、僕の友人の弁護士をつけますから、取調べでは何も言わないでくださいよ。すぐに行きますからね」
ヤスオと佐藤だった。マジ泣きしてくれていた。僕は、彼らを心配させないように、できるだけにこやかな顔を作った。
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