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僕と理香は病院の玄関を出た所で、タクシーを拾うと自宅に向かった。
車の窓から外を眺めると、目に映る人々はどこかうつろで暗い感じがする。ホームレスや失業者の数が増えているのがすぐに分かった。
いったいこの国は、どうしてしまったんだ?
「そこのマンションで停めてください」
マンションの前まで来ると、料金を支払いタクシーを降りた。その瞬間、少しふらついた。
「ケンちゃん、大丈夫?」
「ああ、病院で寝っぱなしだったから、少し足元が落ち着かなかっただけ」
エントランスをくぐりエレベーターに乗り込むと自分の部屋に向かった。
部屋の前まで来ると理香が鍵を開けてくれた。約3ヶ月ぶりの帰還だ。
「ちょっと待っててね。カレー温めるから」
理香が部屋に入るなり慌てて、キッチンに向かいコンロにかけてあった、カレー鍋を温めだした。
「慌てなくていいよ。それより火傷すんなよ」
彼女にそう言うと、ジャージに着替えた。
それにしても、部屋が綺麗に片付いているな。やっぱ、理香も女の子なんだな。一人で住んでいた時より部屋が狭くなったけど、いいもんだな。
もしかしたら、結婚って案外悪いもんでもないのかな?まあ、今日は色々考えるのはやめよう。それよりヤスオが言っていたことが気になる。
テレビのリモコンを握り、電源入れて、ニュースチャンネルに合わせた。
相変わらす、政治と経済は、ガタガタのようだな。というか、いよいよ恐慌目前ってところなのか。これからどうなるのかな。
レミングが集団で崖から飛び降りるみたいに、僕たちは全力疾走で崖に向かって走っているのか?
テレビに見入っていると、いつのまにかテーブルの上にカレーと野菜サラダが並んでいた。
「今日は、難しいこと考えないで、ゆっくりしたら?さあ、召し上がれ」
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