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「ああ、キョウちゃんは大丈夫。検査の結果ナノロボットが体内に全く寄生していなかったらしい。毎日元気に会社に出てるって」
「それは、良かった」
「それでさ、今、会社の中で変な噂が流れているらしいよ」
「どんな?」
「ゴールデン・パートナーというヘッジファンドが、富国電気の株を買い増して大株主になったんだけど、彼らもリーマンショックのあおりを受けて経営が悪化したらしいんだ。
それで、富国電気の株式をどこかへ売却しようとしているらしいんだよ。それでもって、富国電気の大株主が大量に株を放出したらしい。問題山積みって感じだね」
「ひとつ、聞きたいんだが、そのリーマンなんとかってなんなの?」
「ああ、そうか……。ケンちゃんは、ずっと眠ってたから分からないよね。リーマンってリーマンブラザーズのこと」
「ああ、あれか。で、リーマンブラザーズがどうしたのさ」
「簡単にいうと、リーマンブラザーズが仕掛けたアメリカの不動産バブルがはじけて世界経済が崩壊しかけてるんだよ」
「バブルって、90年代の日本の不動産バブル崩壊みたいなやつ?」
「そうそう、そんなやつ。でも、今回はアメリカ本国だけじゃなく世界に波及してしまったんだ。基軸通貨だったドルの信用が崩壊したとたんに、世界中の通貨が一気に下落した。とにかくひどいよ。ユーロに合流しなかった、ポンドとかまで下落してるくらいだから」
「そうか、なんかいやな世の中になって来たな」
「そうだね。今回はすごく深刻だと思う。ちょうど百年前と同じようになった。世界恐慌が起きて、保護主義が始まって、ブロック経済に突入して、第2次世界大戦が勃発した時とまったく同じ状況だね」
「戦争って……。ヤバイじゃん。あ、そうだ。佐藤に傭兵部隊作らせようぜ。ゴリさんと犬井山に行った時に、マシンガンぶっ放しながらヘリで降りてきて、敵を制圧してくれたからな。あいつ、インテリでクソマジメなくせに、どっかいかれてるところがあるからな。意外に向いてると思う」
「そういう問題じゃないんだけど……。そうそう、先生からケンちゃんが目を覚ましたら、ブザーをならしてくれって言われてたんだ」
彼は、そう言うと僕のベットに備え付けられている、ブザーを押した。
しばらく、すると担当医と看護士さんが来て、いろいろ聞かれたが、別に異常なしとの事だった。しかし、血液検査の結果、肝臓が少し悪いから、お酒を少し控えるように言われた。
それから、2時間くらい経つと、バード博士が現れた。いくら博士といっても、やっぱりジジイだ。話が長い長い。こっちゃ病人だっての。
ナノロボット除去手術の話を永遠として、話が終わるとそそくさと帰っていった。
そのうち、少し眠くなって目が覚めたら、夕食の時間だった。マズイ病院食を食べ、睡眠薬をもらって強制終了。まあ、病院生活ってこんなもんでしょ。
ヤスオは、それから2日後に退院していった。
僕は、しばらくかかるようだ。肝臓が悪いって言ってたからな。結局、ヤスオより一週間遅れて、退院する事になった。
退院の準備を済ませ、ロビーに下りていくと、正面玄関に理香が立っていた。
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