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ヤスオは、一度だけうなずくと、またキーボードを叩き始めた。

「お父さん、僕らの完敗だ。それで、一つだけお願いがあるんだけど」

「何だ。お前は、まだ私のスネをかじる気か?」

「そうじゃないよ。久しぶりにお酒が飲みたいんじゃないかなと思って」

「おお、そうだな。また、一杯やりたいな」

やはり、そうだ。こいつは、オヤジの弱点さえも完璧にコピーされている。

まだ、ツキは落ちてなさそうだ。

そういえば、昔こうやってオヤジからよく小遣いをせびってたな。

「京介、さっき通った部屋の入り口の所に、中年男性が落とした缶ビールが転がっていただろ。注意を引き付けておくから、急いで取ってきてくれ」

「なにするつもりだ?」

「いいから、頼む」

京介は、目立たないように部屋の外に出て行った。

京介が缶ビールを手にして戻ってきた時、オヤジのクローンにみつかってしまった。

「速水君、すまないが、そこのピットからビールを飲ませてくれないか」

「は、はい」

「ははは、なんだか君も大人しくなったな。昔は手に負えない子だったんだが、こうしてみんなが大きくなった姿を見ながら酒が飲めるとは思わなかった」

僕の右前方の機械から大きな管が出てきた。どうやら、これが親父の人工知能を支えてる体の「口」にあたる部分らしい。

京介は、缶ビールのふたを開けると、その管の中に中身を流し込んだ。

オヤジの映像が僕に語りかける。

「ひゃー。久しぶりだな。そういえば昔はこうやってよく晩酌したもんだったな。いや、実にいい気分だ。ところで、賢一。さっき言っていた、願い事はなんだ。今なら一つだけ聞いてやってもいいぞ」

「それじゃあ、人質にしているシステムを開放してもらえないかな?」

「それは、無理だ。そんな事をすると私の命が危なくなる」


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