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「どういうこと?カメラやセンサーなんか何一つ見当たらないし。怪しいところなんか何一つないぞ」
「そこが、怪しいんだよ。今さっきから同じ場所をグルグル回っている感じでしょう。壁や廊下の景色も何一つ変わってないし。ワザと同じような景観を演出して、前方に出てくる十字路の左・前・右のどれかを選択する事で次のステージに移る事が出来るようになっているんだ」
「なるほど、初めて訪れた侵入者が迷ってゴールにたどり着けないってわけか。だとすると、もう帰り道は確実に分からないな……」
「そうだね。でも、このシステムは大手セキュリティ会社や国家機関も実際に採用してるんだ。だけど、帰る方法は一つだけあるよ。彼らが何らかの目的を果たした後、その後をつけていけば、とりあえず地上に出られるんじゃないかな」
「なるほど。とりあえず、このゾンビ軍団について行くしかないって事ね。どうでも、いいけどかなり歩いたな。京介、大丈夫か?」
「ああ、俺も少し疲れたけど、まだ大丈夫だ。でも、この廊下はほんとにストレスを感じるな。曲がっても曲がっても、同じ景色しか出てこない」
僕らが、互いに愚痴をこぼしながら歩いて行くと、彼らはやがて奥の部屋へと導いてくれた。
部屋というよりは、小ホールのような間取りだ。部屋の中央にはステンレスの機械が幾つもあり、奥には大きな頑丈なドアがある。
彼らは、その機械の前に立ち止まると、手に持ったコンビニのレジ袋の中から弁当を取り出した。
そして機械の引き出しを開け、おのおのが持ち寄った弁当の中身を入れた。まるでコンポストに生ゴミを捨てるような感じだ。
彼らは、弁当の容器をレジ袋に戻すと、引き出しを閉めた。そして別の方向を向いて、ゆっくりと歩き始めた。
最後尾の中年男性が歩き始めると、レジ袋から缶ビールがすべり落ち、ゆっくりと僕らの方に向かって転がって来た。
その光景を見たヤスオが僕に問いかけた。
「ケンちゃん、どうする?今なら彼らの後を追いかけて戻れるよ」
「そうだな。どうする京介?」
「ああ、帰りたいのはやまやまだけど、冷静に考えたら、帰ったところで俺たちが置かれている状態が変わるわけでもないしな。ここは、行くしかないなだろう……」
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