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そのことを想定外のことと考えた時点で、社会主義も資本主義も致命的な欠陥を抱えていたというわけだ。

でも、僕は社会主義も資本主義も、どちらも本当は間違っていないような気がする。

東西諸国の国家の中枢にいた人間が不正を犯し、私服を肥やしたから、市場の信頼を失って崩壊しただけだ。そういう意味では、佐藤の言うことは的を得ている。

社会主義にしろ、資本主義にしろ想定外だったのは、ごくごく少数の人間が、一つの国の富が偏在するほど集められるシステムを組み込める脆弱性を持ち合わせていたということだろう。

そのシステムから富を吸い上げた世界中の政治家や役人、それに企業家達は、自分達の不正を経済学者に押し付けて、弱気な発言をしている。

かつての日本がそうであったように、社会主義体制であっても、不正が起きなければ十分維持できると思うんだけどな……。資本主義だってそうだ。

貨幣を商品とみなして取引を行うマネー経済が主流になった1980年代までは、戦争という問題こそあったけど、今よりはまだ生きているという実感があったと思う。

子供のころからランボルギーニが欲しかったか。京介らしいや。

今、思い返せば、スーパーカー・ブームのあの頃は幸せだった。

そんな事を考えていると、カーナビのナビゲーション音声が響いた。例のバーの近くに着いたらしい。カーナビの機械的な音声が、目的地に着いたと繰り返している。

京介は、ハンドルを握り締めたまま僕に話しかけた。

「とりあえず、着いたみたいだけど……」

「目の前の、交差点の向こうに駐車場があるからそこに止めてくれないか?」

「わかった」

彼はそう言うと、駐車場に車を止めた。


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