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街に出た後、京介が尋ねた。

「とりあえず、どこに行ったらいいの?」

「え〜と、六本木なんだけど分かる?」

「渋谷は良く行くけど、六本木とか赤坂はイマイチよくわかんねえんだよな。カーナビ、セットしてよ」

ちょうど、赤信号で交差点にかかった。いいタイミングだ。

「分かった」

助手席側から手を伸ばして、タッチパネルのカーナビを操作する。液晶画面に現れた地図をスクロールして、目的地をこの前訪れたバーにセットした。

どうでもいいけど、アイドリング状態でもすごい音だ。歩道を歩く人たちがチラ見していくのが痛い。

「京介よ〜。どうでもいいけど、このランボルギーニ買ったの?」

「ああ、子供の頃から欲しかったからな。でも、新車で2千万くらいだったよ」

「へぇ〜2千万か……。僕も買おうかな」

「でしょう〜。やっぱいいよね。俺らのガキの頃は、これ乗ったら1番みたいなとこあったよね」

「だね…。スーパーカー・ブームでみんな熱狂してたな」

信号が青に変わった。シートに強烈なGが降りかかって、ランボルギーニが滑り出す。

僕たちをチラ見していた歩道を歩く人たちも、周囲の車も何も見えなくなった。エギゾーストノートが、全てを消していく。

さっきまでうるさく感じていたが、今は違う。不思議な乗り心地のよさを感じていた。

そのうち、京介が口を開いた。

「ウチは、さあ……。結構貧乏だったじゃない。で、スーパーカーのポスターすら買えないから、自動販売機の近くに落ちていた、コカコーラの王冠集めてたよ」


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