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「賢一さん、言い過ぎですよ。康市君は、ITコンサルティングだけじゃなくて、富国電機切ってのハッカーなんですから。仕事で忙殺されて疲れたんじゃないですか?たまには実家で静養させるのもいいかもしれません」

「だな。風邪の時期だしね。ところで、2人ともコーヒーはいかが?」

「ホットでブラック」

京介はパソコンから目をそらさずに小さな声で言った。

「佐藤君は?」

「僕も、ホットでブラックお願いします」

「じゃあ、ちょっと待ってて」

給湯室に向かうと、人数分のインスタントコーヒーを用意した。他の階の給湯室は、OLで賑わってるんだろうけど、このフロアの給湯室は殺風景だ。

昼間なのに人気の無い給湯室を後にすると、またパーティションの奥の緊急対策課に戻った。

「佐藤君、コーヒー」

「あ、ありがとうございます。すいません、使いだてしちゃって」

「京介もほら、コーヒー」

「オ〜、サンキュウ〜」

彼は、そう言うとコーヒーに手を伸ばした。僕はコーヒーを手渡す隙を見計らって、京介の机の上に、ロビンマスクと阿修羅マンを置いた。

京介は、パソコンを見つめながらコーヒーを飲み出した。

だが、しばらくして、机の片隅に置かれてあるキン消しに気付いたらしい。むせながら、コーヒーカップを机の上に置くと、キン消しをまじまじと見つめた。

彼も暗号を覚えていたらしい。僕の方に向かって、ゼスチャーで何かを伝えようとしている。

「京介、ちょっと早いけど食事に行くか?」

「お、おう、そうだな……。行こうか」

「じゃあ、佐藤君。出社したばかりですまないが、ちょっと出かけてくるけどいいかな?」


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