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「おう、気をつけてな」

ドアを閉めた理香に応えた後、また車を走らせようと思った時だった。京介に連絡しなければいけないことを思い出して、再びサイドブレーキを引いた。

スーツの胸ポケットから携帯電話を取り出して、「午後から出社する」とメールを送った。すぐに京介から、「OK」としか書かれていないメールが届いた。

相変わらず、そっけない。普通、午後出社するといったら、「どうして?」とか「何かあったのか?」などと心配してくれるものだと思うんだが。長年の付き合いで気心しれた仲というのも考えものだ。

思わず、電話帳から京介の携帯番号を呼び出す。だが、電話をかけるのはやめた。

とりあえず、お目当ての物を調達するまで、メールや電話は控えたほうがいいだろう。ここは先を急ごう。そう考えて、またハンドルを握った。

朝の渋滞をくぐり抜けて、しばらく走ると、中野に出てきた。

車を駐車場に止め、まんだらけ・中野店に向かった。さすがに平日の午前中に足を向ける客はいないらしい。

客に余計な関心を寄せないのは、この手の店の暗黙のルールだが、さすがに不審に思われたようだ。入店してすぐ、店員の視線に気づいた。

あまりいい気分ではない。店員に会釈すると、素早くキン消しコーナーへ向かった。

「え〜っと、ロビンマスクと阿修羅マンだけど……。あるかな〜」

ショーケースの中を見ていると2体とも在庫があったが、金額を見て驚いた。1個525円(税込み)と値札がつけられている。レア物は、5〜6万円近くするものまである。

僕らが子供の時は、ガチャポンで1回、50円程度だったのに。僕と同じく、恵まれない子供時代を過ごした大人が、お金を手にした今、買い漁ってるってとこだろうか。

しょうがないので、525円のロビンマスクと阿修羅マンを購入して店を後にした。

駐車場に戻り、車に乗り込むと、キン消しを眺めた。約20年ぶりの御対面だ。

しかしまあ、子供の頃、よくこんなくだらない物に夢中になれたもんだ。


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