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僕は、そう返事すると彼女の手を握りしめた。
やがて、僕らを乗せた車は晴海のマンションの近くに着いた。
「ここで結構です」
運転手に車を止めるように告げた。
「え? しかし」
「女性連れですよ。察してください。上の人に悪い話は持っていきませんから」
「は、はあ…」
マンションから少し離れた所に車を止めさせた。女性連れというのは、言い訳だ。本当は裏側の人間に、自宅をつきとめられるのはマズイと思ったからだ。
運転手は、素早く車から降りると後部座席の方に回り込み、ドアを開けてくれた。
車が遠ざかるのを見届けると、僕らは、マンションの玄関から奥のエレベータに乗り込んだ。そして、自分の部屋まで来ると、なんとか無事に帰ってこれたという実感がわいてきた。
「入りなよ」
玄関の鍵を開けると、、理香が呆然と立ちすくんでいる。
「あ、うん。ありがとう」
「こっちに来てそこいらに座ってよ」
「うん。て、いうか、かなりいい所に住んでるね」
「そ、そうか?う〜ん、確かにそうだな。1人で暮らすには少し広すぎるけどね」
正直に言うと、この時僕は疲れきって意識がもうろうとしていたので、彼女の話もあまり耳に入って来ない状況だった。
「リカチンよ。今日は、もう疲れたので、そこいらでくつろいでちょうだい」
「そんなの関係ねぇ〜、そんなの関係ねぇ〜」
彼女がなにやら変なダンスを踊っているようなので、よく見てみると、理香は勝手にテレビをつけて意味不明な体操のような動きをしていた。
なんだありゃ〜?ああ、小島よしおのマネしてんだ。
どうでもいいけど、またこの国に低俗なスターが誕生したんだね。
でも、理香を見ていると何かムカつくな。
コイツ、まるで懲りてねぇ〜。
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