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「え〜〜。マジで。ヤバイよ、マジヤバ〜。御曹司じゃん。で、あたし玉の輿だね。ウフ」
オイオイ……まだ、君と結婚するなんて一言も言ってないよ。ビジネススーツ着てたから、雰囲気違って見えたけど、美森で援交してた時とノリ同じじゃん。
そう言いたかったけど、僕は言葉にせずに、グラスをあおった。
しばらくすると、オーダーした料理がテーブルに並べられた。
僕は、自宅で軽く夕食をとったので、グラスを傾けながら、彼女が食事をすませるのを待った。
理香は、小柄の女のくせに、テーブルいっぱいにならべられた料理を片っ端からたいらげた。ギャル曽根かよ。しかも、僕の事なんか目もくれないでやんの。やっぱ美森で会った時のノリそのまんまだ。
とはいっても、どちらかと言うと僕は、人と話すのが苦手なので、苦にはならない。そもそも、こういう静かな空間は大好きだ。
「出ようか?」
彼女が食事を済ませたので、勘定を払って店を出た。
「ケンちゃん、これからどうする?」
「そうだな。どうする?」
急だったので、何も予定を考えていなかった。このまま帰る気分にはなれないが、なかなか言い出せないでいると、その気持ちを汲んだのか、理香が口を開いた。
「あたし、ちょっといいお店知ってるんだけど。そこ、行ってみる?」
「うん」
理香は、僕の手を握り締めると歩き出した。僕は、なにげに彼女に寄り添うように歩いた。
二人で歩き始めると、妙に静かになったことに気付いた。
そう言えば、前に冴島に連れて来てもらった時に彼が言っていた。最近の六本木は夜が早いようだ。深夜の12時を過ぎると人がいなくなるらしい。
飲食店のラストオーダーも11時30分までの店が多い。
さまざまな商業施設が出来たが、大衆の意に反した、不動産バブルだったのかな?
まあ、そんなことはどうでもいいか。
しばらくすると僕らは、怪しげなビルの前に立っていた。
「リカチン、ここに入るの?何か怪しくないか。ここ……」
「大丈夫よ。さあ、行こう」
ほんとかよ。なんか一昔前のぼったくりバーっぽいぞ。とはいえ引くわけにもいかず、彼女に言われるがままビルの中に足を踏み入れ、エレベーターに乗り込んだ。
そして、僕らは3階にあるバーに入店した。ヤバイな。いつの間にか、こいつのペースにはまっている。なんだか、また、怪しい空間に誘いこまれたぞ。
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