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しばらくすると運転手が僕に話しかけてきた。
「お客さん、六本木はどちらへ?」
「え〜と、六本木交差点アマンド裏の方へ行ってもらえますか」
「はい、分かりました」
しばらくし、タクシーが止まると料金を支払い、2人で向かいのビルに向かって歩き出した。
「ケンちゃん、どこに行くの?」
「この、ビルの2階にダイニングバーがあるんだ。個室もあるからゆっくり食べられるよ。ゆっくり話でもしようよ」
僕は、以前冴島に連れてきてもらったダイニングバーに行くことに決めていた。
彼女は、僕の後ろを、おそるおそる歩いていた。タクシーの中での濃密な雰囲気が嘘みたいだ。妙によそよそしくなった。
店に着くと個室に案内された。適当にみつくろって料理をオーダーすると、理香と乾杯した。
「久しぶり」
「え?」
「だって久しぶりじゃない?まさか東京に来てるとは思わなかった。今日の会議の時、理香ちゃんにそっくりな人がいるなとは思ったんだけど、まさか君だとは思わなかった」
「うん、そうだね。私も富国電機で仕事していたら、またケンちゃんに会えるかなって思ってたけど、こんなに早く会えるとは思わなかった。それにしてもびっくりしたよ。ケンちゃんが富国電気の取締役だったなんて」
「そう?でも、僕は名ばかりの取締役で、まだ実務はまかされていないんだ」
「へぇ〜そうなんだ」
「僕のオヤジが富国電気の創業者なんだ。それで、美森で経営してた会社を部下に任せて、僕は富国電機の取締役におさまったってわけ」
「そ・う・ぎょ・う・しゃ?」
「つまり、その……。富国電気は僕のオヤジが作った会社なんだ」
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