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「できるらしいよ。でも、僕はそんなことしたことないけどね。エコノミーでいいから」

「どうして〜」

「僕は、地道にコツコツやってお金を貯めたんだ。1円、1円の重みが体に染み付いているから、贅沢が出来ないんだよ」

「ふ〜ん。お金持ちなのにケチなんだね」

「別に、けちじゃないよ。本当に必要なことにお金を使いたいんだ。できれば自分だけじゃなくて、みんなが幸せになれるようにね。今はまだその方法も見つからないけど」

彼女は携帯電話を枕元に置くと、僕の手を握り締めた。

「あたし、今はこんな感じだけど、1日1日を大切にしてるんだ。子供の頃、お母さんと約束したんだよね。今日という日は2度と来ないから、1秒1秒を大切にしなさいって」

「そうか。いいオフクロさんだ。僕も子供の頃オフクロによく言われたよ」

今日という日は2度と来ないから時間を大切にしなさいか……。子供の頃、その意味がピンと来なかったな。でも、大人になった今の僕には身にしみて感じ取ることが出来る。

「それだけ将来の目標がはっきりしてるんだったら、こんな事もうやめた方がいいよ」

「う、プ〜」

「どうしたの?」

「え、どうしたって……。やめた方がいいって言っているわりには、お兄さんの固い突起物があたしの背中に当たってるんですけど」

「げ!……。いやまあ、その男の性ですな。口では正論を吐いても、股間は敏感に反応するもんで、つい……」

「ハハハハ。お兄さん、チョ〜受けるんだけど。ところで、お兄さんの名前聞いてもいい?」

「ケン、賢一だよ」

「じゃあ、ケンチャンだね。ケンチャン、あたしね今度派遣の紹介で東京の大きな会社で働けるかもしれないいんだ」

「そう、よかったね」

彼女と話し込んでいると、いつのまにか情が湧いてきた。気がついたら横になって腕枕をしてあげていた。

僕らは、孤独を紛らわすように語り合うと、いつのまにか眠りに落ちた。

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