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ほんとに親友ですか?

マダムの手の上にあるエンブレムの裏面には、Yshiaki-Kuriharaと刻まれている。

なんだ、なんだ。どうしてオヤジの名前が刻まれているんだ。どうでもいいけど、ほんとに弁償しなくてもいいんだろうか……。

「スミマセン……、あのエンブレム壊しちゃったの、弁償しなくていいんですか? それから、ここに刻まれている名前って僕の父親と同じ名前なんですけど。どうしてなんでしょうか?」

マダムはしばらく口ごもっていた。だが、意を決したらしく、話し出した。

「確かに、これはあなたのお父様のお名前です。じ、実は、私の父がこの店をオープンした時に、あなたのお父様から記念にいただいた物なのです」

「そうなんですか? でもどうして?」

「私もあまり詳しくは知らないんですけど、私の父とアナタのお父様は無二の親友だったらしいんです。それで、お引き立ていただいたみたいなんです」

知らなかった。でもどうしてマダムも僕のオヤジもそのことを話してくれなかったんだろう。ひょっとして富国電気のことと何か関係があるんだろうか。

マダムの表情を見る限りでは、どうやらそれ以上のことを知っていそうではなかった。

それに食事の席だ。尋ねるとしたら日を改めたほうがいいだろう。マダムにエンブレムを外してしまったことを詫びると、また席につこうとした。その時、マダムに引きとめられた。

「もし、宜しかったら、そのエンブレムをどうぞお持ち帰り下さい」

「これをですか?こんな高価な物を。それに、父がアナタのお父様に贈った記念の品でしょう?」

マダムは、頑としてエンブレムを持って帰れと言い張ったが、なんだか不自然だった。とりあえず食事中だし、ヤスオがいるということで、僕は席に戻った。

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