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しばらく沈黙が続いたが、またヤスオが言葉を割った。

「これは、難題だな。ますます迷宮に入っていっている感じだ……」

「ところでゴリさん、すみませんが休みをもらえませんか?僕ら、もう1年くらい休みとってないんで……」

ゴリは、たちまち顔が真っ赤になった。怒りが沸騰点に達するのが目に見えるようだ。ヤスオと京介はドン引きだった。

「お、お、お前……。この状況で、よくそんな事が言えるな」

「いえ、あの……その、みんなフラフラだし、この状況で仕事をしても効率が上がらないと思うんで……。それに、カラープログラムから新たに派生したパープル・パーツの解析を待つというのもアリなんじゃないですか?

少なくともパープル・パーツは1つ以上のバグがあることがわかっています。ひょっとしたら、そこからメインモジュールを停止させる方法がわかるかもしれないじゃないですか」

「分からなかったらどうするんだよ」

「星の数ほどあるネットにつながった世界中のパソコンをトレースしてメインモジュールを探すなんて無理でしょう?もしそうするとしても、パープル・パーツの解析を進めた方が絞り込んでやるべきだと思います。時間の無駄になるどころか、新たに傷を広げる可能性もありますから」

「なるほど、たしかにそうだな。パープル・パーツの解析を待って新たな手を打つか。それも1つの手だな……」

ゴリは、僕にそう言うと、山積みの書類の一部を手にとって仕事をはじめた。営業のミスで生じた書類整理はゴリ一人では片付けられそうもなかった。

でも、ここで殊勝にも「手伝いましょうか」なんて言ったら、やぶへび間違いなしだ。僕たちは、直立不動のまま、視線だけで合図を送りあった。

「お前、休みとって何すんの?」

京介が視線だけこちらに向けて話しかけた。

「とりあえず美森に戻って実家の整理でもしようと思ってるんだ」

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