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すると正面の大きな扉が開いた。踏みつけられたまま、視線を移した。ヤスオだ。馬鹿、帰れ。お前みたいなへタレがかなう相手じゃない。そう必死に叫んだが、言葉にならなかった。

ヤスオがこちらに歩いてきて、周の前で立ち止まった。

「僕の友達をよくも痛めつけてくれたな。落とし前はつけさせてもらうぞ。今から僕の奥義、カマキリ拳でキサマをこらしめてやる。ハーチュオ〜〜」

「バカ、ヤスオ。逃げろ、お前がかなう相手じゃない」

そう叫んだが、とどかなかった。京介を必死に呼んだが、彼は気絶しているようだ。まるでドリフのコントのような、ヤスオのカマキリ拳が周を倒せるとは思えない。

しかし、次の瞬間、周はパープル・パーツの入った携帯をヤスオに投げつけると仲間と退散した。

オー、イキナリ予想外デス。ヤスオのカマキリ拳に降参したの?まさか、君は中国武術の達人なのか?

すると、蜘蛛の子散らすように逃げ帰っていく周とすれ違うように50歳前後のオジサンが、こちらに歩いて来た。

「大丈夫ですか? おけがは?」

「ええ、大丈夫です。勝手に倉庫に入って申し訳ありません。富国電機の栗原と申します」

僕が立ち上がって、名刺を出すと、オジサンは、丁寧に名刺を押し頂いた。

「存じております。さきほどご利用いただきました、中華楼の主人です。息子が御迷惑をおかけ致しまして誠に申し訳ございません。店員から息子がお客様にご迷惑をおかけしていると聞きましたもで、駆けつけてきたありさまです。けがは大丈夫でしょうか?」

「はい、私は大丈夫です。でも、こっちはどうかな?」

僕が京介の顔を叩いてみると意識が戻ったようだ。

「いって〜。たく…」

そう言うと京介は何もなかったように立ち上がった。

「とりあえず、店の方に戻っていただけませんか。おけがの手当てを含めて、改めておわびをさせていただきたいとおもいますので」

「いえ、こちらこそ、勝手に倉庫に入ってすみませんでした。事情を詳しく話せませんが、あらためてもう一度お店におうかがいして、お話させていただきたいと思いますので。とりあえず、社にもどらないといけないものですから」

「そうですか。それでしたら、お引止めはできませんが。ぜひもう一度店の方にいらしてください。お詫びといってはなんですが、ぜひ料理でお楽しみいただきたいと思いますので」

僕らは、中華楼の御主人に埠頭で待ってもらっているタクシーの所まで道案内をしてもらうと、お礼を言い、タクシーに乗り込んだ。

走り出した車の中から後ろを見ると、御主人がいつまでも深々と頭を下げていた。

周高潔は、ヤスオのカマキリ拳にびびったのではなく、単にオヤジさんが怖かっただけなんだ。たしかにあのガタイならしょうがないわな。安田大サーカスのクロちゃんみたいだし。

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