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「あの〜何か?」

「いえ、夜分誠に申し訳ございません。私はこういうものです」

僕はそう言うと懐から自分の名刺を差し出した。彼は僕の名刺を受け取ると自分の名刺を僕に差し出した。名刺には、株式会社MSL企画、代表取締役、崔貞永と書かれていた。

なんの会社か名前だけだとさっぱりわからないが、主にパンフレット製作・印刷や、ホームページ製作なんかをやっている会社のようだ。

「え〜と。それで、仕事のご依頼か何かでしょうか?」

「いえ、仕事の依頼じゃないんですが…。ちょっとその関係でお尋ねしたいことがありまして……周高潔って方をご存知ですか?」

「知ってるも何も幼馴染ですよ。昔は実家の料理屋を継ぐみたいな事を言っていたんですけど、最近はプラプラしながら時々ここにバイトに来るので、たまに顔を会わせる程度です。それで、高潔が何かしました?」

「いえ、実は私共はコンピューターウィルスの調査をしているのですが、周さんにお尋ねしたいことがありまして」

「コンピューターウイルスですか。そういえば、ここ数日前に、遊びに来てた時に、パソコンでマージャンゲームやりながら、カラーだとかパープルだとか叫んでいましたけど」

「そうですか。それで、彼はコンピューターのソフト開発なんかの経験はあるんでしょうか?」

「彼自身はどうかわからないですけど、そういった技術を持ち合わせた奴とつながりはあると思います。今の悪ガキは暴力行為で金銭を巻き上げるようなタイプじゃなくて、非合法なおもな収入源は、ハッキングから得る利益がほとんどですから」

そりゃそうだな。僕らがギャングをやっていた頃とは大きく変わっている。昔は後輩に嘘のパー券(パーティー券)を売らせたり恐喝などをさせていたが、今は後輩にRMTやポイント獲得サイトで地道に金を挙げさせているらしい。悪ガキの知的レベルが上がった。あくまで合法の範囲で金を吸い上げる方法を組織的に行うのが今のやり方だ。

「それで、周高潔さんの行きそうな場所って分かりますか?」

「そうですね…。夜は本牧埠頭辺りに溜まってるんじゃないでしょうか。前に一度連れていってもらった事があるから場所は何となく分かりますよ。今地図を描きますのでしばらく待ってください。確か奥の方に、今は使われていない倉庫があったんだよな…」

彼はそういうと、僕に地図を手渡してくれた。

僕らは、彼に礼を言うとMSL企画を後にした。

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