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セキュリティのかかったドアを開けて部屋に入ると、狭い空間に20台くらいパソコンがあった。その奥にもの凄い数のサーバーが設置されていた。
「こっちへ来てくれ」
バード博士は、その中の1台のパソコンが置かれた机に座ると、僕達に説明し始めた。
「これは、実にユニークなプログラムだ。見てみなさい、このパソコンは今ネットワークに接続されていない状態だ。その状態を自動的に検出して、レッドパーツプログラムが通信ポートを開けて、ネット上に出て行くために、欺瞞するメッセージを出している。この画面に表示されているメッセージがそうだよ」
ディスプレーを覗き込むと、「通信が出来ない状態です。直ちにネットワークに接続して下さい」とメッセージが出ていた。
「ネットにつながっていない以上、レッドパーツは隔離された状態にある。だから自分では動く事はできないんだ。だから、人間にネット上へ開放してもらう道を作ってもらおうとしているんだよ。わずか数時間前までは、こういう動きはみられなかった。
ソースが膨大だからまだ解析しきれていないが、どうやら、ナノロボットの電源を確保するために家電製品やパソコンの電源回路に寄生した後、自分自身が寄生したシステムから、他へ流出するためのアルゴリズムを自動解析できる機能がそなわっているらしい。
つまるところ、ナノロボット経由でレッドパーツをうつされたパソコンや家電製品なんかは、それ自体がレッドパーツを運ぶナノロボットと同じような役割を果たす可能性もあるというわけだ」
京介が質問をはさんだ。
「バード博士、で、どうやったらこいつを止められるんですか」
「ちょっと、待ってくれ。まだ完全に解析できたわけじゃないんだ。今のところ、わかっているのは、このラボから逃げ出したナノロボットが、通信ネットワークを通じて世界中に広がったことだ。発信元もつきとめることができた。東京の渋谷にあるネットカフェだ」
ヤスオは下を向いたまま、ふるえていた。自分のしてしまったことの重大さが、今になって重くのしかかってきたのだろう。
「それともう一つ、厄介なことがわかった。世界中に広がったレッド・パーツが、ブルー・パーツと接触して、パープル・パーツを生み出した事だ」
「それって、レッド・パーツよりもさらに知能が発達した上に、被害を拡大させる可能性のあるプログラムってことですか」
「残念ながらそういうことだ。カラープログラムには、ロボット工学の三大原則と禁止命令が設定してあるはずなんだが、動きからしてそれが見当たらない。今のところはなんともいえないが、ロボット工学の三原則を無視して、人に危害を与えたりする行動を直接取る可能性もある」
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