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康市が動揺したように慌てて話し出した。
「僕もそのメール受け取ったことありますよ。グローバル・エージェンシーのプレゼンテーションの時、事務所にプレゼン資料を取りに帰る途中Mr.COLORって差出人でメールが来ました。その後、信号が全部青になって事務所に早く帰れたんですよ」
「僕のとこには、1年前くらいから来てたよ。でも、僕の方は0と1だけだから、てっきり誰かがイタズラしていると思って無視してたんだ。うちで作った最新のウイルスチェックソフトにもひっかからないし」
僕がそう言うと、京介が話し出した。
「俺のとこには、なにも来てないな。それより、みんなに送られてきたメールはCOLORプログラムとなにか関係あるのかな?」
「まさかと思いますけど、COLORプログラムがインストールされたナノロボットって、人間にも寄生するんですよね。僕たちの体内にナノロボットが侵入してるなんてことはないですよね」
佐藤の問いかけに、みんな下を向いてしまった。
じゅうぶんありえる話だ。もし、自分の体の中に、COLORプログラムが乗ったナノロボットが脳神経に侵入してるとしたら?もし何者かがナノロボットを操れるとしたら、殺される可能性だってある。みんな同じことを考えたらしい。恐怖感でみんな再び下を向いてしまった。
「とりあえず富国電気に戻ったら、ラボのでみんな一度、MRI検査を受けてナノロボットが人体に侵入してないかチェックしないといけないな」
みんなの不安そうな顔を横目に僕が話すと、皆は無言でうなずいた。
沈黙の時間が流れる。しかし、ワインが時間を洗い流し始めると、そんな恐怖感もいつの間にか忘れて世間話に花が咲いた。
佐藤は酔いが進むと彼女の自慢を繰り返した。最初はみんな付き合っていたが、さすがにうっとおしくなった。そのうちみんなは、彼の話を横目で眺めながら、新たにオーダーした料理を食べるようになった。しかしまあ佐藤は、酒癖といい、女癖といい、ちょっと問題アリだな。ほどよいころを見計らって、ヤキ……いや、再教育してやらないと。
「じゃあ、とりあえず今日は解散しましょうか」
「そうだな。よく考えたら、あんなヤバイとこから戻ってきたばかりだ。どうせ急いだって始まる話じゃねえから、一晩ゆっくり休んで考えようぜ」
京介の提案にみんな賛成した。とりあえず腹も満たされたので長居する必要はない。会社のカードで会計を済ませると、みんなで店の外に出た。
「それじゃ、みんな明日な。それから佐藤、彼女にしっかり胡麻すっとけよ。フォローしとかねえと、結婚してから今日の事、ボロクソに言われるぞ」
京介の話に、佐藤は顔がゆるみっぱなしだった。やっぱり彼女に会いたかったんだろうな。京介も家族と連絡取りたいだろうし、康市はオヤジさんとオフクロさんと一緒に過ごしたいだろうから、とにかくこれ以上の長居は野暮だ。
みんなと軽く挨拶を交わすとバラバラに分かれた。
僕はホロ酔いかげんでタクシーをつかまえてカプセルホテルに向かった。相変わらずこういった時の一人寝はさみしいものだ。
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