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「すまない。康市、俺はやっぱりこの子を殺すことはできない。お前の親父さんやお袋さんや、ついてきてくれた人たちの生活を守ることができなくなるけど、それでもやっぱり無理だ」
「いいんすよ。それで。その考えにみんなついてきたんすから。それに人生ドツボの状態から、ここまで登り詰めることができたんすから。悔いはないっす」
晴れ晴れとした康市の笑顔を見て、覚悟を決めた。僕は、脇差を捨てた。
「爺さん、俺は、この子を殺さない。その子を放してやってくれ。俺を殺すならそれはそれでかまわない。その代わり、こいつと、さっき屋敷に侵入した毛深いオヤジは助けてやってほしい」
「浪花節か。見事だな」
藤田が皮肉な笑いを浮かべた。もはやこれまでか。部屋の外が何やら騒々しい。大人数の足音が廊下から聞こえてくる。
まだ、兵隊が来るのか?これでこの世ともサヨナラか。オヤジとおふくろに会えるかな。最後に麻美に会いたかったけど、それも仕方ない。
腹を決めた時だった。次の瞬間、藤田達の顔が青ざめた。
「賢一、助けに来たぞ。安心しろ」
佐藤と京介だった。しかも部屋に入り切れないほどの兵隊を連れてきていた。いや、兵隊じゃない。僕の昔のギャング仲間や康市の暴走族仲間だった。
「てめえら、そのジジイどもをしめちまえ」
京介が叫ぶと、ギャングと暴走族連中が、藤田を拘束した。一気に片がついた。
京介と佐藤が僕のほうに近づいてきた。
「賢一さん、大丈夫ですか?」
迷彩服に身を固めた佐藤が尋ねた。
「大丈夫だけど、どこでそんなもの調達してきたの?」
「米軍の払い下げ品です。たまたまうちの社員で電波マニアの子がいて、作戦の様子を傍受してたものですから、急いでかけつけてきました」
「でもどうやって、こんな山奥に?」
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