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「どこだ。何もないじゃないか?」

「お前の目の前だ。この少女の心臓の中にいるナノロボットが持っている」

「なんだと?」

女の子は、何もわからないまま、僕を見つめていた。

「この脇差を貸そう。レッドパーツが欲しければ、この子を殺して持っていけ」

藤田は腰に差していた小刀を抜き、僕に投げてよこした。同時に僕の体を押さえつけていた兵隊達も手を離した。

「お兄ちゃん、こわいよ」

脇差を拾った瞬間、女の子がそう言って僕を見つめた。女の子は、僕たちの会話は理解できないが、身の危険は理解できるのだろう。体の震えが止まらなくなった。

「冷徹になれ」もう一人の自分がささやく。

両手で小刀の枝を握り締め、思いっきりこの子の左胸を差せ。そうすればレッドパーツは消滅するし、カラープログラム自体も鎮静化する。そうすれば、僕は胸を張って富国電機に戻って代表権を継承できる。それだけじゃない。

これから被害を受けるかもしれない世界中の人たちを救うこともできる。この子一人の犠牲で全てがうまくいく。汚れろ。汚れてしまえ。それでいいんだ。

でも……それでいいのか?僕は何をしたいんだ?誰かを殺してまで得る正義があるのか?自分の金や名声を守るためのいいわけじゃないのか?どうすればいい…。何の罪もない少女を殺してまで僕は、COLORをストップさせる必要があるのか?

たった一人の人間を助けられなくて、本当に世界が救えるのか? 僕が描いていたブルー・アース・プロジェクトは、そんなものじゃなかったはずだ。

「賢一さん、やめましょう」

「康市……」

「俺と同じ気持ちだってことはわかってますよ。賢一さん、ブルーアースプロジェクト立ち上げる時に言ってましたよね。俺たちの作るシステムで、世界中の争いや貧富をなくすことができるようになるって。

それに惚れたから、俺はついてきました。佐藤さんだって、ネットの上で協力してくれたエンジニアやプログラマだってそうです」

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