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私達兄弟は祖父母の家に引き取られ幸せに生活を取り戻した。2ヶ月が過ぎたころだったかな。両親の死亡の連絡が伝わってきた。連絡といっても紙切れ一枚だけだった。あれからだ、兄さんがアメリカを憎むようになったのは……。
アメリカの正義や大日本帝国の大儀など関係ない私達兄弟は両親を殺されたのだ。何の罪もない両親を、そして貧しくとも幸せな家庭を崩壊させられたのだ。
兄さんはいつも言っていた。いつかアメリカに報復してやるってな。
それから、私と兄さんは中学校を卒業すると地元の町工場に就職した。二人とも額に汗し、手に職をつけ、がむしゃらに金を貯め、富国電気を起こした。
事業は戦後の高度経済成長の影響もあって、右肩上がりで成長し、日本有数の企業へ成長させることが出来た。だが兄さんは、あの日の事が忘れられなかったようだ。むしろ、余計に憎しみが強くなったらしい。そして、アメリカに対しての報復計画、そうカラープロジェクトを立ち上げたのだ。
表面的には、民生技術を向上させるためのものだが、実質的には後から開発されたナノロボット技術と連動して、世界経済や世界各国の近代兵器を自分の思い通りに動かすことができる物だった。
私と、ここにいる執行役員は義明兄さんを失脚させる事でカラープロジェクトを封印する事に成功した。だが、社内には義明派の社員が多数おり、これらの人間を全て排除する事は出来なかった。
賢一、今、お前の隣に座っている河島も義明派の人間だ。兄さんは彼の事を随分可愛がっていたから今もコイツは兄さんやお前に忠義をつくすだろう。
「いえ、会長、私は……」
ゴリは、叔父の指摘を受けて、言葉を濁した。
お前のことは疑ってはいない。いや、そんな事はどうでもいい。現状から把握出来るのは旧義明派の人間がカラープログラムを社内から秘密裏に持ち出し何か企んでいると言う事だ。それを阻止しなければならない。
美森市の犬井山の二ノ岳に藤田正治という男がいる。この男は日本の赤字国債を10%弱保有しておって、政界も財界も手が出せないフィクサーともくされる男だ。文字通り、治外法権のような環境の中で生活している。
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