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「ああ、そうだな。出たとこ勝負で行くしかないよな。それはそれとして、なんだか別のものを壊しているような気がするんだ」
「壊している? なにをですか?」
「なんだろう、一言で言えば価値観かな。たとえば、この国は君みたいに、自分にとっての幸福を名言できない人が増えたじゃない。それって社会の体制が乱れたとか、国際社会が急激に変化したとかいった自然に起きたことじゃなくて、誰かがそうしているような気がするんだ」
「うーん、難しいですねえ。どうなんだろう」
冴島とつまらない会話を楽しんでいると、ドアが開いてゴリがこちらに走って来た。
「ヤバ……」
冴島が、慌ててタバコを消した。
「お前ら、またここでサボってたのか。まったく、どうしょうもねえな。栗原、会長がお呼びだ。俺といっしょに今から行くから早く準備しなさい。冴島は戻ってさっさと仕事しろ」
僕と冴島は素早く身支度をすませると、ゴリについてエレベータに向かった。
エレベーターホールに着くとドアが開いた、僕とゴリが乗り込むと冴島は笑いながら敬礼をした。精一杯の嫌味だ。
「あのやろ〜」
ゴリが隣で沸騰しはじめた。なるほど、冴島は強い男だ。ひょっとすると結婚が彼を変えたのかな。彼の奥さんに一度会ってみたい。ひょっとするとゴリみたいなごつくて指毛の生えた奥さんだったりして。
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