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「車変えたんだ」
「いや、うちの若手のやつ。ちょっと乗りづらいけどガマンして」
僕は、康市から預かった鍵で、運転席のドアを開けて乗り込むと、助手席のロックを外した。
「乗りづらいけどなんだか眺めがいいわね」
「まあ、またオナラこかないでくれよ」
脇腹に肘鉄をかまされた。ちょっと調子に乗りすぎた。僕は無言でエンジンをかけ、車を走らせた。
中央ゲートの守衛所まで上がると、ドアを開けて、車を降りた。そして、麻美と僕のネームカードとIDカードそれと駐車券をブースの中にいる守衛のオジサンに手渡した。
守衛のオジサンはしげしげと確認していたが、こちらを一瞥すると、ゲートバーをあけた。そのまま、オジサンに会釈して、車に乗り込んだ。車を出すと、あっという間に、グローバル・エージェンシーは遠くなった。
「スカイネットって、どこにあるの?」
「次の信号を右に曲がってすぐよ」
歩いて10分くらいのところなら、僕が送っていくこともなかったなと思っていた時だった。
「ごめん、ここで停めて」
麻美が車を停めるように言った。なるほど、本当に近くだった。慌ててブレーキを踏むと、彼女は助手席のロックを外して車を降りた。
「じゃ、今日はおつかれさま。折角だから、ちょっと事務所によっていく? 車なら駐車場に入れておけばいいから」
「うーん、アキラとは昔色々あったからなあ。まだ心の準備が出来てないんで、今日はパスしとくよ。それより、携帯とか住所とか変わったんで一応名刺渡しとくわ」
僕は、スーツの胸ポケットに入れておいたプライベート用の名刺を麻美に手渡した。
「じゃあ、今度メールするから」
麻美はそう言って助手席のドアを閉めた。ドアが閉まるのを確認した後、僕はクラクションを1回ならして車を走らせた。
ルームミラーで後を見ると、麻美が深々と頭をさげているのが見えた。再会したわけでも、二度目のサヨナラでもない。深々と頭を下げている麻美の姿を見て、複雑な気分になった。
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