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考えろ。考えろ。何か手はあるはずだ。予備のペーパー資料をめくりながら、必死に考えをめぐらせた。そうだ。そう言えば前にもこういう事があった。

小さな広告代理店でアシスタントのバイトをやった時だった。僕がプレゼンテーション資料を忘れた時に、広告プランナーの人が、自分の大学ノートにサインペンで絵や文字を書きながら、まるで紙芝居の用にプレゼンをやった事があった。これならなんとかなるかもしれない。いや、やるしかない。

「京介、俺今からホワイトボード借りてくる」

「ホワイトボード?」

「ああ、ちょっとアイデアがある。とりあえず、それで間を繋ごうと思うけどいいか?」京介は意味が理解出来ないようだったが、首を縦に振った。

僕は急いで小ホールを出て、受付に向かった。ホワイトボードとペンを貸してくれるよう催促すると、地下の庶務課に行ってくださいと言われた。

慌てて、エレベーターに飛び乗ると数十秒で地下の庶務課にたどり着いた。そこには、うだつの上がらない50過ぎのオッサンと、二十歳そこそこの牛乳瓶の底みたいなメガネをかけた女の子がいた。

オッサンの方は、黙々と鉛筆を削り、その削り終わった鉛筆に名札のラベルをつけていた。今時、そんなもの誰か使うのかと思ったが、そんなことはどうでもいい。とにかくこのオッサンに話しかけると、話がややこしくなるのは間違いない。

もう一方のなにやらデジタルディバイス(電子化)された書類をプリントアウトしてコピーしている女の子を捕まえると素早く話しかけた。

「あの〜スミマセン、実は今日プレゼンテーションを提案させてもらいにきた業者の者なのですが、ホワイトボードとペンを貸して貰えませんか?」

「奥の備品室にあります。ご案内しますね」

彼女はそう言って、僕を案内してくれた。彼女の後ろに続いて歩いた。どうやら彼女に頼んで正解だったみたいだ。オッサンは、僕のことなど気にも留めず、ひたすら鉛筆を削っている。

備品管理室は綺麗に整理されていた。

「これでいいですか?」

彼女はそう言うと、ちょうど手で持てるくらいのホワイトボードとペンとボード消しを渡してくれた。


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