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彼がブレーンに加わったおかげで、僕の会社は急成長を遂げた。
やはり、佐藤を取締役・最高財務責任者に就任させたのは正解だったと思う。
彼のスキルは素晴らしい。だが、彼のビジネススタイルには、少し疑問を感じる部分がある。もっとも、そのことを、僕も含めて誰も口にしないけど。
「今日のプレゼンは、他社と競合でオープン形式なんですよね」康市が、僕に聞いてきた。
「ああ、本当はうちがそのまま受注する予定だったんだけどな。かなり厳しい状態だ」
当初は、僕の会社が単独で受注するはずだったが、どうやら、受注額の大きさの噂を嗅ぎつけた他のIT企業が、飛び込みで営業をかけたらしい。
企画書と見積もりをター坊に渡した次の日に、彼が申し訳なさそうに電話してきた。
人生というものは、都合のいいことばかりは続かない。多少凹んだが、フルガッツ&サクサクで、企画段階からやり直して、ここまでこぎつけた。
不眠不休が響いているが、それももうすぐ報われる。とにかく全てが今日で決まるのだ。
「それにしても佐藤さん、遅いっすね〜」
康市が僕の机の前で、時計を見ながら、足を小刻みにゆすっている。確かに遅い、遅すぎる。苛立ちも限界に近い。
社会人になって増設された「ガマン」という機能は、そんなにキャパがあるわけじゃない。でも、ここで僕が、「おせーぞ〜〜〜コラッ」なんて、ぶち切れてしまうとみんなが動揺してしまうのは必至だ。
天下分け目の戦いの前に、みんなの志気が下がるのはまずい。
パソコンに視線を戻そうとしたら、携帯が鳴った。画面を見るとペコちゃんからのメールだった。
「\(佐藤)? は、アーケード入り口のたこ焼き屋で立ち止まってま〜す(⌒A⌒;)」
オフィスの外で、ペコちゃんも佐藤の出勤を待っていたらしい。
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