店を出て、かなり飛ばしたが、港に着くまで20分近くもかかった。
港に着くと、古ぼけた小さな赤レンガ倉庫近くの路地裏に車を停めた。
そして、車外に出て歩き出すと、潮の香りと薄ぼけたカビの臭いが鼻をついた。
ポケットから、再び地図を手に取ると、町並みを見ながら確認した。
数件のスナックと居酒屋の奥に、古いビルが立ち並んでいる。
どうやら、水産関係の貿易会社が入居している、雑居ビルの中に奴らのアジトがあるらしい。
奴らは、何かあった場合にそなえて、国外にすぐ退去出来るように、ここにアジトを構えているのだろう。
しかし、今回は、とてつもなくヤバそうな雰囲気だ。
今更ながら、僕は、とても喧嘩が弱い。
子供の頃から、強そうな奴らにブラ下がって生きながらえてきた。
さほど、大した武勇伝もない。
ギャングのプレジだったけど、本当のところは、口先番長だった。
いつも、喧嘩は僕の代わりに京介や他の奴らが先頭に立ってやってくれた。
ビジネスも同じように、彼や周りの人達が上手く立ち回りこなしてくれた。
僕は、どうしようもない、木偶人形だ。
でも、今日は、自分1人で何としても、遣り通さなければならない。 |
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