彼女と、世間話をしていると、泰蔵の実家、関口自動車に辿りついた。
車を自動車整備工場の前に止めると、二人とも事務所の方に向かった。
事務所の前まで来ると、室内に明かりが灯り、中に泰蔵が居るのが分かった。
ドアを開け室内に入ると、泰蔵が彼女に向かって話し出した。
彼は、修理代の説明をしたり、電話番号を聞いたり、事務処理をすませると、彼女に台車を用意して見送った。
僕は、彼女が闇に消えていくのをぼんやりと眺めていた。
すると、泰蔵が突然話し出した。
「オイ、栗原。飯、食ってないんだろう?食っていけよ」
「ああ…。ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えようかな」
彼は、そう言うと事務所の電気を消して、奥の実家に迎え入れてくれた。
実家の玄関を上がり、居間に通されると、泰蔵は奥の部屋へ消えていった。
僕は、座布団の上に座ると、部屋の中を眺めた。
何もない部屋だけど、何かこう、生活感があって落ち着く家だな。
しばらくすると、彼が戻ってきて話し出した。
「今、オフクロ様に飯を用意してもらってるから」
「す、すまないな」
「いや、いいよ。俺も、今日は忙しくて。朝から何も食ってないんだ」
「そうなんだ…」
「それより、お前こっちに帰ってきて仕事あるの?例の事件で有り金全部巻き上げられたんだろう」
「まあ、それは追々考えようかなと…」
「それなら…」
その時、襖が開き、頭のハゲちらかした泰蔵の親父が部屋の中へ入ってきた。 |
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