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「エッ。ああ、分かった…」

彼は、作業をしながら僕に話しかけた。

「オレッチの事覚えてるかい?」

「ああ、覚えてるよ」

「嘘つけ。俺だよ、関口泰蔵だよ」

「オゥ〜〜〜。タイゾウか。お前、あまり学校来なかったから印象薄くて。ワリィーな」

「いや、いいよ。まあ、高校の連れなんて、みんな、そんなもんだろう…。よっしゃ、出来た。今から、この車を俺の家まで持って行くんで、お前その娘を乗っけて行ってくれるか?」

「ああ、いいよ。でも、お前の家しらねえし…」

「じゃあ、後をついてこいや」

彼は、そういうとレッカー車に乗り込んだ。

僕は、彼女と自分の車に乗り込むと泰蔵の後を着いて行くことにした。

エンジンを掛け、車を走らせると彼女が話しかけてきた。

「あの〜。栗原さんですよね?」

「そ、そうだけど」

「へぇ〜。そうなんだ。こんな所で有名人に会えるなんてビックリ」

「別に有名人じゃないけど…。だけど、車あんなになって災難だったね」

「ほんとうに、もう最悪。あ、私、石井恵里です」

「そう、エリちゃんか。今、何歳?」

「19歳です。今年短大卒業するんですけど、上手く就職出来るか悩んでるんですよ」

「そうか…。でも、みんな同じ気持ちじゃないのかな。不況っていうか、世界恐慌だからね」

「ですよね。ところで、栗原さんは、どうしてこっちに帰って来たんですか?」

「それは聞かないでよ。あまり意味はないけど。もう、東京に居てもやる事ないからね」


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