通路の中に入ると、正面から冷たい風が吹いてくる。
ポケットから携帯電話を取り出して、通路の側面を照らした。
ほんの数メートル程度は見えるが、明かりが弱くそれ以上先は見通せない。
息を殺して少し歩き出すと、京介が僕の耳元で囁いた。
「賢一、アソコ。何か光ってないか?」
「かなり小さいけど確かに光ってるな。あれって出口じゃないのか?」
「そうみたいだな。でも、どこへ出るんだろう?」
「わからない。でも、出口なのは確かだろうな。それより、ヤスオ、ちゃんとついて来てるか?」
ヤスオのことが気になって、声をかけた。
「大丈夫だよ。出口までどれくらいあるの?」
「正確なところはわからないけど、あと20分位歩かないとダメみたいだ。どうでもいいけど、壁から水が染み出しているな。ズボンの裾がずぶ濡れだよ。二人とも足元に気をつけて歩けよ。京介は大丈夫か?」
「ああ、同じくズボンの裾がずぶぬれだ。どうやらここは、手掘りで掘った横穴みたいだな。水脈に近いところを掘ったから、水がしみでてるんだろう」
それから、暗い中を20分近く歩いただろうか。
なんとか出口付近にたどりついた。
出口の先には、病院の廊下のような通路が見える。
少しだけ頭を出して誰もいないか確認してみた。
「どうだ?大丈夫そうか?」
京介が尋ねた。
「また何かの建物につながってるみたいだ。よく分からないけど、ここにいるよりはマシみたいだな」
「とりあえず、中に入るとして、右と左、どっちに行くよ」 |
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