無料オンライン小説 COLOR ラスト・コンタクト



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「お、オゥ〜。起きてるよ」

彼は、少しビックリしたようだが、何とか目を見開いて僕に問いかけた。

「それで、これからドコ行くの?」

「なんだ、聞いてなかったのかよ〜?ヤスオと考えたんだけど、僕らの過去の記憶を探っていけば何か手掛かりが見つかるような気がするんだ」

「そうか。とりあえず、それしかないわな。それじゃあ、小学校に行ってみる?」

「じゃあ、そうしよう」

僕らは、母校である美森第1小学校に向かって歩いた。

さすがに、小学校を卒業してかなりの時間が経過しただけある。幼少の頃に通った道の面影はすっかり消え失せていた。

旧家や個人商店などは、ワンルームマンションと月極駐車場に変わっている。

なかには、売り家の札が貼ってあるものある。

誰も、何も話せなかった。ただ前を見て歩くのが精一杯だ。

なにか今の日本が抱える地方都市の現状をマザマザと見せ付けられた感じだ。

でも、ニュースで冷え込む地方経済なんて報道されているけど、あれは、ある意味間違っている。

昔、取引先だった東京の企業担当者の人達に、よく聞かれた事があった。

「駅前がこんなに衰退したんじゃ生活もくるしいでしょう?」ってね。

残念ながら、それは間違いだ。彼らは、昔の地図やガイドブックの知識しか無く、今もなお旧市街地が街の中心だと思っている。

実は、郊外に大型ショッピングモールが出来たので、ほとんどの人達は、郊外の新興住宅地に移り住んだのだ。

東京に住んでいる人達にはきっと分からないと思うけど、大手商社が山の中に町1つ分の土地を取得して、巨大ショッピングモールを建てたのだ。

したがって、ある日突然、街が移転したのだ。そして、ショッピングモールの本店が利益を吸い上げ、旨味のある所を東京に持っていく。

それだけの、単純なからくりだ。地方経済が衰退したわけではない。というより、東京や中央の経済を、地方都市が支えているのだ。東京もいつ同じような状態になるか、わからないということだ。

40分くらい歩くと、小学校にたどり着いた。

今日は、休日なので誰もいないようだ。

校門の所で、三人でぼーっと校舎を眺めていると、中から用務員らしき男の人が出てきた。


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