「美森ですか?でも、駅から15キロ以内の場所って……」
「ガセネタだったら、こいつが出した富国電機の株の売り注文、取り消させるぞ」
京介が割って入った。
「ガセじゃありませんよ。お見せしましょう。この資料を見れば、おわかりでしょう」
上原は、そう言うと、カバンから資料を出して、テーブルに置いてみせた。ひったくるようにして手に取った京介の脇から覗き込んでみた。
資料の中には、アクセスログから割り出したポイントからCOLORのメインモジュールが存在する場所を推測する説明が書かれていた。流し読みしてみたが、どうやらガセではないようだ。
「詳しい場所は?美森駅から15キロ以内といっても」
「私が入手した情報は、これだけです。でも、あなた方のホームタウンでしょう?心当たりがあるんじゃないんですか?」
「これじゃなあ……。なあ、賢一」
「しょうがない、でも、とりあえず情報が掴めて良かった。京介、それより急いで美森に行こう」
「そうだな。そうしよう…」
「じゃあ、僕らはこれで。この資料はいただいていきますが、よろしいですか?」
「ええ、それより先ほどのお話をよろしくお願いいたします」
このまま、売り注文を取り消して逃げることもできるのだが……。上原が落ち着きはらっているのはなぜだろう。わからない。だが今は美森に急ぐのが先決だ。
僕らは、立ち上がり、上原に礼を言うと店を出た。
エレベーターに、乗ると無言だった京介が突然話し出した。
「しかし、本当に美森にあるのかな?COLORのメインモジュール」
「僕は、上原の言っていた事を信じるよ。確かに美森は不思議な街だし、初めて大停電が起きたのもアソコだからな」
「そうだな。そう言えば、誰かが小学生の頃、言ってなかったけ。確か、戦時中に、美森市の地下に相当広い地下壕が作られて秘密軍事工場が建設されてたって噂があったよな」
「ああ、そういう噂があったな」
1階に着くとエレベーターを降り駐車場に向かって歩いた。
交差点を渡りしばらく歩いた。駐車場に着くと、京介は携帯を取り出して、嫁に電話し始めた。
僕もヤスオに電話して、飛行機のチケットの手配するよう頼んだ。
僕が電話を切ると、京介の方も話がついたようだ。京介の後に続いて、車に乗り込んだ。再び、あのエンジン音に包まれる。だが、うるささよりも、気が急くばかりだ。
「とりあえず、今からどうする?」
「今、ヤスオに飛行機チケットの手配を頼んだ。チケットが手に入ったら後で電話するって。とりあえず、羽田方面に向かおうか。美森に直行することになるだろうし。嫁さんとは話がついてるんだろ?」
「ああ、そうしよう」
京介は、そう言うと車を駐車場から出し、羽田方面に走らせた。 |
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