店に入ると、カウンターの奥で、ダルマの様なマスターがグラスを洗っていた。
この前、理香とこの店を訪れた時と同じような感じだ。
店内を見回して見ると、奥のボックスシートで、上原和輝が1人グラスを傾けている。
相変わらず、静かな店だ。
僕の後から入ってきた京介が後ろで、そっと囁いた。
「奴か?」
「ああ……」
僕が、恐る恐る上原の席に近づくと、彼は僕らに気付いて立ち上がった。
そして、一礼すると僕らに座るように言った。
「この前は、どうも失礼しました」
上原は、グラスを置いて言った。物腰は丁寧だが、やっぱり裏社会の人間だ。言葉が丁寧なだけ、威圧感を感じる。
「いえ、こちらこそ」
そう答えたものの、僕はやはり落ち着かなかった。
「そちらの方は?」
「彼は、僕のブレーンで早見京介です」 |
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