関係あるよ、メチャメチャ関係ある。と、いうか少しは反省してくれよ。
雨も上がったらしい。僕がベランダに出て夜景を見ていると、部屋の中から理香が叫んだ。
「ヒュ〜。青春ですな」
慌てて室内を見ると、理香がテレビの上に置いていた写真盾を手にとって眺めている。
普段なら怒るとこだが今日はやめておこう。なんだか、かったるいしね。
フォトフレームの中に入っている写真は、確か美森のITコンサルティングに佐藤が入社してきた頃のものだ。
創業以来、初めて東大法学部を卒業した人間が入社して来たということで、みんなでお祝いに記念撮影をした写真だ。
あの頃は、良かったな。と、いうよりは純粋に楽しかった。
金はなかったが、夢と友情と愛に満ち溢れた日々を過ごしていた。
今の僕は、多くの物を手に入れたが、本当に欲しかった物はすべて失ってしまった。
夢と友情と愛。それと引き換えに、金と権力をむさぼる男に変貌しつつある。
くだらない事を回想した後、部屋に戻ると、理香はソファーで眠っていた。
僕は彼女を寝室のベットまで連れて行くと、そっと上から毛布をかけた。
彼女の顔を良く見てみると、まだ涙が流れている。
あんなにハシャイデいたのに、やはり女の子だな。
今日、起きた出来事がよほど怖かったのだろう。
僕は、寝室から出るとダイニングに戻り、ソファーに横になった。
理香がつけたままのテレビは、いつのまにかニュース番組に変わっている。
最近、日本の政局が安定してないな。まあ、どうでもいいけど……。
そう言えば、今日会った上原って奴は信用できるのかな。いや、あいつを信用しようとは思っていない。カラーの情報を持っているというのは、本当だろうか。
今は誰も信じることが出来ない。寝室で眠っている理香だって怪しく思える。
2人でつるんで、僕をハメようとしているのかもしれない。まあいい。今日は冷静になる事も出来ないので後日ゆっくり考えよう。でも、とりあえず手帳にメモしておこう。
ジャケットから手帳を取り出すと、2人の事をメモした。
そして、その下の欄に、女の涙に同情するとロクでもない事になるとメモした。
しかし、今日の出来事は京介だけには密かに知らせておかないといけないな。
そんな事を考えながら、頭の中で何人もの人の顔を思い浮かべていると、僕はいつのまにか眠りについた。 |
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