夜の東京は、地方都市とは違い極度に渋滞がひどい。
目の前の渋滞待ちで停車している車のテールランプの群れを眺めていると、何だかゆううつな気分になった。
何とか渋滞を抜けて富国電気に近づくと、オフィス街はきらびやかな光を放っている。窓越しに流れる景色の中に、ショーウインドを眺めている女性が目に入った。
会議室で見た時と同じスーツと髪型。おそらく理香だろう。会社の近くで待っておくように言っておいたのに、かなり離れた所まで歩いて来ている。
運転手に車を止めてもらい、理香を連れて再びタクシーに戻った。
理香が隣に座るのを待って、ルームミラー越しに運転手に話しかけた。
「とりあえず、六本木に出てもらえますか?」
「はい。でも、今の時間は少し渋滞していますから、時間がかかりそうですが宜しいですか?」
「はい、かまいません」
僕と運転手のやりとりが終わると、少しの間、沈黙が続いた。
しばらくすると、理香が手を重ねてきた。
僕は、無言で窓の外を流れる景色を見ながら、理香の手を握り返した。
何か話そうと思ったが言葉が出てこない。いざ彼女を目の前にすると、さすがに照れた。
美森で、とんでもない出会い方をしたけど、不思議な時間を今こうして重ねている。人との出会いというものは誠に不可思議なものだ。
今日会うのが二回目なのに、彼女の気持ちが手に取るように伝わってくるような気がした。 |
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