無料オンライン小説 COLOR デッド・オア・ア・ライブ



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あの頃が懐かしい……。もう二度とあの光景を見る事は出来ないだろう。

気持ちの整理がついたつもりだったけど、夕日を眺めていたら、亡くなった美森の両親の思い出が胸の奥に残っている事に気付いた。

しばらくし、ふと我に返り周囲を見渡すと、いつのまにか日が落ち、街に明かりが灯り出している。

室内に戻り窓を閉めた。まだ暑いが、夜露が降りると部屋の中がますます湿っぽくなる。カーテンを引いて、エアコンをドライに設定した。そして、冷蔵庫のドアを開け中からロマネコンティを取り出しワイングラスに注いだ。

殺風景な部屋の中で、濃厚な赤いワインの色だけが浮いて見える。

実のところ、僕はワインには全く興味がない。1本30万円もするワインだが、自分で買ったわけじゃない。取引先の胡散臭いIT企業の社長さんにケースでもらったやつだ。

ずいぶんいろんな人にあげたけど、それでも全部を処分できない。ヤフオクで処分するのも考えたけど、会社での立場から考えて、身元がばれるのはマズイ。

かといって、捨てるのはさすがに勿体ないので、少しずつ飲む事にしている。

残念だけど、味の良し悪しさえも分からない。今日みたいな日はまた余計に味が分からない。

気分を変えてブログでも更新するかな。

最近、会社の人達の悪口を書くのが、唯一のストレス解消法になっている。もちろん、匿名だけどね。つまんない男になったと思うけど、まあこんなこともアリかと思う。本当にヤバイことは書いてないし。

ほどよく酔いが回ってきたところで、ワイングラスを置きパソコンに電源を入れようとした瞬間、突然携帯電話が鳴った。

「こんな時間に誰だろう?」

どうせ、くだらない奴だろうと思ったが携帯電話を手に取った。

「はい、栗原です」

「あ、スミマセン。間違えました」

あ〜、かったり〜。間違い電話かよ。電話の相手は女性だった。間違いを告げると素早く電話を切った。ほどよく酔いが回ってテンションが上がって来た所だったのに。

パソコンの電源を入れて、ブログの更新を始めた時だった。また、携帯が鳴った。

非通知の電話だ。どうせ、また、今さっきの間違い電話の女だろう。

しばらく、放置しておいたが鳴り止まなかったので、また出てみた。


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