店を出ると周囲は暗闇に包まれていた。
「ヤスオ、もう一軒どっか行くか?」
「いや、ちょっと飲みすぎたみたいなんで、このまま家に帰るよ」
「そうか、俺もちょっと飲みすぎたみたいだな。じゃあな」
僕は、ヤスオと別れ、ワンルームマンションの方に向かって歩き出した。
歩き始めたら、三番館のマダムのことを思い出した。なぜあんなに慌てていたんだろう。それに、なんで僕にエンブレムを持って帰れって言ってきかなかったんだろう。
いくら何でもオヤジの形見の品だからって、あんな席でしきりに持って帰れなんていうことはないだろう。それに、なんで今頃、僕のオヤジとマダムのオヤジさんが親友だったなんてことを話しだしたんだろう。
オヤジが死んでから、何回もあの店に通ってるのに。考えれば考えるほど怪しすぎる。まあいい。細かいことを考えるのはよそう。それにしてもかなり酔いが回ってるな。
なんだかんだで、ヤスオとワインをボトル1本あけたしな。めろめろだ。足が地に付いてない感じだ。
歩けば歩くほど酔いが回ってきて、歩くのがつらくなった。できるだけ近道しようと思って、僕は、ホテル街の中を抜ける近道へ足を向けた。
「あら……、この道はさすがにカップルばっかだな」
でも、あちらこちらに、女の子が一人で立っているぞ。どうしたんだろう。OLぽい女の子ばっかだけど、彼氏と待ち合わせなのかな。
酔いにまかせて、僕が、もくもくと歩いていると一人の女の子が近づいてきて僕の腕をつかんだ。
「なんですか?」 |
|