無料オンライン小説 COLOR 愛と友情の讃歌



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いまだに、こんな事やって飯食っている奴がいるんだな。こまかくちぎってゴミ箱に捨てた。

馬鹿につきあってる暇はない。クリーニングに出しておいた布団を押し入れから引っ張り出してベットに敷いた。休暇とはいえ、やはり仕事のことが気になる。ゴリはともかくバード博士からメールくらい来ているかもしれない。置きっぱなしにしてきたパソコンは少しほこりをかぶっていたけど、全然大丈夫そうだった。

服を着替えてパソコンに電源を入れる。バード博士からのメールはない。ゴリからも何の音沙汰もない。休暇を楽しめってことかな。しばらくすると、急に気が抜けて、ベットにもぐった。


翌日、目が覚めると時計の針は11時を回っていた。慌てて服を着替え、実家に向かった。

休みをとると、ついつい気がゆるむものだ。今から大急ぎで全部片付けたとしても、ヤスオと待ち合わせた時間には間に合わなくなってしまう。

しょうがないか……。

今日は簡単な片付けをした後、持ち運びがじゃまにならない分だけの両親の遺品を持ってくることにしよう。久しぶりの実家の空気に浸る間もないだろうけど、仕方がない。もたもたしている暇はない。

急いで着替えてマンションを飛び出ると、たまたま美森ふれあいバスが通りかかったので手をあげた。

「すいません」

「あ、いえ」

運転手は、バックミラー越しに僕の顔を見て驚いていた。

そうだろうな。ただでさえ、産業の空洞化で若い人がごっそりいなくなりはじめているのに、平日の昼間にバスを利用する若者なんているわけがない。

美森ふれあいバスは、赤字ローカル路線などで潰れたバス路線を見森市が買い取り、第3セクターで運営しているものだ。小さな小さなマイクロバスに、お年寄りがすし詰め状態で乗っている。お年寄りも、僕が乗り込んできて驚いていたようだった。

「お兄ちゃん、どこから来たの?」

「東京からです。実家が美森なんで」

「そうかいそうかい。よく帰ってきたね」

見ず知らずのお年寄りから話しかけられたけど、悪い気分じゃなかった。話が盛り上がってきた時に悪かったけど、バスが僕の実家の前まで近づいたので、チャイムを押した。

「150円になります」

運転手から料金を告げられて、会釈した後、150円を払って降りた。美森ふれあいバスは、好きなところで乗り降りすることが認められている。町中でも、手をあげるとバスが止まってくれるのだ。


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