もう、すぐそこに彼の居場所がある事を直感的に感じたからだ。
僕らは息を殺して周囲を見渡した。
「あれじゃないか?」
京介が指差した。どうやらそのようだ。
小さな倉庫といっても普通の2階建ての民家三軒ほどの大きさがあるが、周囲の倉庫よりは、あきらかに小さい。
京介が、ターボライターの火をつけタバコをふかしながら無言で入り口を指差した。
彼の指先を見ると倉庫の2階へとつながる階段が見えた。
僕はヤスオに小さな声で耳打ちした。
「お前は、その辺のコンテナの陰に隠れてしばらく待機しておいてくれ。もし、俺たちに何かあったら、富国電気の佐藤に連絡して状況を説明してくれ。佐藤なら、陸上自衛隊のテロ鎮圧部隊か神奈川県警のSITを動かしてくれるから」
「分かった。でも、気をつけてね…」
僕と京介は、鉄製の階段の下まで近づくと、革靴を脱ぎ、ゆっくりと階段を上りはじめた。
ほんの少しだが僕の背筋に緊張感が走り始めた。
昔の刑事ドラマのように、ガンガン上ってやりたいとこだが現実は、こんなもんだ。おまけに丸腰だし。 |
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