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「どうぞ」

インターホン越しにぶっきらぼうな声が響く。

オートロックが外れたので、中に入ってみると、みんなコピーを取ったりファイリングをしたり、慌しく働いていた。誰かに話しかけようにも、取り付く島がない。

仕方がないので、偉そうに席でふんぞりかえって、扇子を仰ぎながらアクビをしているハゲた中年男性に話しかけてみた。

「あの〜、庶務課の課長席はどちらでしょうか?」

「私が課長の今関ですが、なにか?」

「お忙しいところ、誠に申し訳ありません、商品管理室、緊急対策課の栗原賢一と申します。突然で恐縮ですが。庶務課に配属されている田畑泰男君を、しばらく私の部署で預かりたいのですが、かまいませんでしょうか。人事を通した話ではありませんが、ご迷惑がかかる話にはしませんので」

「田畑を? それはかまいませんが。栗原って…」

ハゲは、扇子を閉じると、バネがはじけたみたいに立ち上がって、直立不動の姿勢を取った。

「あの〜不作法ですが、栗原さんといいますと、栗原前社長の御子息の賢一さんですか?」

「ええ……」

ハゲの態度がさらに軟化した。にやつきやがって、ムカツクやつだ。生理的に一番嫌いなタイプだ。背中に鳥肌が立つのがわかった。

「これは失礼いたしました。もちろん結構ですよ。詳しい話はうかがいませんが、栗原さんが直々に庶務課においでになるということは、よほどのことでしょうから。ところで、もしお時間がありましたら、少しお話よろしいですか?次期の人事についてお話をさせていただきたいことがございまして。今すぐ茶を用意させますので、接客室へ……」

「いえ、緊急の用ですので。今度、役員全員が列席する役員会がありますから、お話でしたら、後ほどメールしていただけると助かるのですが」

「あ、いえ、あの……その、そうですな。お急ぎでしたから、また今度ということで結構でございます」


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