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操縦席のパイロットに事情を説明すると彼はその場で了解してくれた。みんなが乗り込み安全ベルトを締めるとヘリが飛び出した。ものすごい音だ。

僕は、ヘリが中に浮くと藤田邸を見下ろした。藤田さんは、中庭で僕らに向かって大きく両手を振っていた。

「さよなら、藤田さん。いや、また会えますよね」

窓越しに心の中でつぶやいた言葉は、みんなにも伝わったようで、しばらく誰も話すことはなかった。あっという間に市民グランドのピッチャーマウンドの上にヘリコプターが着陸した。

「佐藤氏が要請した自衛隊のヘリは、うまくつじつまを併せて帰還させます。ついでですから、残りの人たちも、美森市に送ってもらうようにしますので。そうすれば、災害派遣に偽装することも容易でしょうから」

「よろしくお願いします。藤田さんにもよろしくお伝えください」

僕らはパイロットに挨拶をするとヘリを降りた。

みんなが降りた後、ヘリは砂埃を巻き上げ、また空のかなたへ消えていってしまった。

市民グランドのフェンスの向こうに夕日が落ちていく。また、ここに帰って来れたんだ。みんなの顔を見ると、ホットため息が出た。

僕はゴリの前に駆け寄るとレットパーツの入ったガラスケースを手渡した。

「ゴリさん、これを持って先に富国電気に帰ってもらえませんか?僕は、ここに残ってチョット調べたい事があるんです」

「ああ、分かった。こいつは会社のラボに持っていって早急に解析しておくからな。それと、危ない事には首突っ込むんじゃないぞ。分かったな」

「はい」

「よし、じゃあ俺は村上さんに挨拶して先に東京に帰ってるからな」

ゴリはそう言うと夕闇に砂埃舞うグランドから去っていった。僕は、佐藤・京介・康市の顔を見ると大声をあげて笑った。

「俺達生きて帰ってきたな。ハハハハハッ、さあ、行こう俺たちのマイホームへ。夢のシャッター商店街にGOGO」

僕が歓喜の雄叫びをあげた瞬間佐藤が申し訳なさそうに言い出した。

「賢一さん……。あの、康市君から何も聞いてないんですか?あの商店街のオフィスは今、倉庫代わりに使っているんです。賢一さんと京介さんが東京に行ったあと、本社は駅前のインテリジェンスタワーの中に移転したんです。報告が遅くなって申し訳ありません」

「いや、かまわない。ITコンサルティングは君の会社だから君の思うとおりやればいいさ」

僕らは、それから少し歩くとタクシーをつかまえ、我がホームタウン、シャッター商店街へ向かうことにした。


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