「そんなに緊張するな。お前たちの志は見届けた。安心しなさい。肩の力を抜いてそこに座りなさい」
僕らは藤田に言われたとおりソファに座った。
「よし、それでは君たちが欲しがっているレッドパーツを見せてやろう」
藤田はそう言うと部屋の隅にある大きな金庫を開けると、手のひらに収まる大きさのガラスケースを持ってきた。
「これがお前たちが欲しがっていたレッドパーツだ」
彼はそう言うと、藤田はレッドパーツらしきガラスケースを僕に手渡した。ガラスケースは会社や学校のバッチ(紋章)などを入れるものと変わらなかった。強いて違うところといえば、中に赤く輝く玉が入っていただけだ。
「これが、レッドパーツですか?」
「そうじゃ、厳密に言うとレッドパーツに反応してナノロボットたちが赤く輝いている状態だ」
「へぇ〜。このチカチカしている奴の中かから1匹取り出してレッドパーツを探さなきゃいけないのか。でも、会社のラボに持っていったら何とかなるな」
「それより義明の息子、お前さんの名前は……」
「賢一です」
「そうだったな。賢一よ。これは、お前にやる。もとはといえばお前の父親、義明に言われて預かっていた物だ。お前のオヤジさんが生前このガラスケースを持って来て言っておった。近い将来コンピュータが暴走することがある。
その時はこのガラスケースをコンピュータなどの集積回路の近くに置いておくとウィルスなどを捕獲できると言っていた。それが必要な時代がきたということだな」
「そうか、このガラスケースはレッドパーツ本体じゃなくて。カラーパーツ捕獲装置にレッドパーツが偶然捕獲されている状態なんだ。どうでもいいけど、爺さんは僕のオヤジの事知ってるの?」
「ああ、お前の親父さんと叔父さんの孝三郎はワシがこの美森市まで連れて来てやったんだ。あれはお前の親父さんが叔父さんを背中におぶって汽車に乗ろうとした時に、ワシが汽車の中から手を握り車内へ引っ張り込んだんだ。
今じゃ考えられないかも知れないが、当時は戦時中で乗り物に乗るのも大変混雑していて乗車するのも一苦労だった。聞けば両親を失って美森市の祖父母の所に行くというのでワシが付き添ってやったんだ。いや、ワシの実家も元々は栗原の実家の近くにあったんでな。
お前の親父さんは子供の頃から正義感が強く頭が良かった。それに人にやさしく自分に厳しい男だった。ワシが、ここ美森市に帰って来た時は21歳だった。南方で負傷して日本に送還されたんじゃ。いや、正確にいうと日本が東南アジアで稼いだ戦利品や軍資金を犬井山に隠すための任務だったんだがな。
この話は終戦とともに時代の闇に葬られ、軍資金はワシのもとなった。それで、影からお前の親父さんを支えて日本の復興をめざした」 |
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