鳴り響くアラーム音が、浅い眠りを引き剥がした。
つき刺すような音が、シナプス経由で脳に突き刺さる。クリアすぎる目覚めだ。
だが、自分が置かれている状況を思い出して、恐怖が足元から這い上がってきた。
そうだ、僕はこれから戦場に向かおうとしているんだ。
寒い……。体中が硬直して起き上がれない。
やっぱ、ベッドで熟睡することに慣れた僕みたいな人間は、地べたに雑魚寝すると、かなりのダメージが残るんだな。
痛みと体のこわばりを制してやっと起き上がると、音が鳴る方を探した。アラーム音は、ゴリの腕時計の音だった。
ゴリは、まだ高いびきで眠っていた。こんな大きな音でアラームが鳴っているのに、よく寝ていられるものだ。そもそも、敵の目をあざむくために、納屋で寝ているというのに、こんなうるさい音を出して大丈夫なんだろうか?
居場所を教えるようなもんじゃないのか?ゴリの考えることはさっぱりわからない。いや、何も考えてないのカモ。
どうでもいいけど、田舎の冬はさすがに寒い。おまけに暖房すらない納屋の中だから、体が硬直しきっている。東京から直行して、疲れていたとはいえ、僕もゴリもよく眠れたものだ。というか、よく凍死しなかったよな。ジャケットに霜が降りてるし。
とりあえず、ゴリの体を揺すり起こす。
「ゴリさん、朝ですよ。起きて下さい」
ゴリは不機嫌な顔を見せたが、すぐ目を覚まして飛び起きた。体を触られると目が覚める体質なのだろうか。それとも自衛隊時代に訓練を通して、身につけたスキルなのだろうか。
「よく寝たな。う〜し、行くか。栗原、これに着がえろ」
ゴリは、自分のリュックから迷彩服を取り出すと、僕に投げた。 |
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