無料オンライン小説 COLOR 悪夢の夜明け



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謎の原因究明

エレベータの回数表示のランプが、会長室の階を通り過ぎた。

「ゴリさん、ちょっと。どこまで降りてんですか?」

「ああ、地下3階まで行くんだ。栗原、地下3階で役員会議をやるってどういうことか分かるか?」

「いや、分かりません」

僕がそう言うと、ゴリは、ハンカチを取り出して、汗をふいた。つくづく暑苦しいやつだ。

「地下のシェルターの中で会議が行われると言う事は、この会社にとって重大な問題が発生したという事だ。俺はそれ以上何も言えん」

ゴリは、それ以来何も話さなかった。

地下3階に着いてドアが開くと、管理責任者らしき人々が続々と、会議室の方へ駆け込んでいった。

僕らも彼らに続いて歩いた。しばらく歩くと受付が設けてあった。IDカードの認証で身元確認を受けると中へ通された。

狭い会議室の中に入ると、25人前後の人達が席に着いていた。僕たちも慌てて名札で指定された席に着席した。

皆の出席を確認した後、司会進行役の佐々木常務が淡々と話し出した。

「それでは全員集まったようですね。本日皆様にお集まり頂いたのは富国電気を運営するにあたりまして重大な問題が発生した事をご報告するともに、この案件を可及的速やかに打開する方法について議論していたきますようお願いするためです。加えまして、この案件について秘密保持を厳守して頂きたいと思います」

一瞬会場がざわめいたが佐々木常務は話を進めた。

「まず始めに、約3ヶ月前、2006年8月7日午前00時00分01秒に美森市で発生したしました大規模停電につきまして状況説明申し上げます。

経済産業省ならびに、東部電力からは発表されていませんが、この大規模停電は、街全体の各電力供給ブロックの電力がランダムに送電されたり切断されるものでした。

なお電力供給元の東部電力が送電システムを調査したところ問題点は見当たりませんでした。そのため、送電システムの部品と制御システムを納品した弊社に調査依頼が来たわけであります。

この事件がまず一点。そして、もう一点早急に対応を考える案件があります。弊社が納品しております街全体の信号機を監視するシステムが全く作動せず、全て青信号になると同時に、走行中の自動車のブレーキが一時的に作動しなくなってしまった件です。

ご存知の通り、大手自動車メーカーを筆頭に、ブレーキ制御用の電子制御回路は、弊社が納品しております。これについても、自動車各社メーカーから正式なクレームが出ていないものの、近々問題提起がなされるものと思われます。

まだ問題があります。この事故の際に、NTTをはじめとした、電話会社の交換システムが不安定になるという症状が発生しました。

その結果、一般家庭用電話と携帯電話が2時間程度つながりにくい状況が発生しました。これら全ての事故について、弊社宛に大規模な民事訴訟を示唆する通知が届いております」


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